ボートトレーラー入門 第4回

舵社「ボート倶楽部」 2000年10月号 連載4回目 (2000.8.2)

著者 塩入 徹(しおいり とおる)


            

写真提供・取材協力 ショアランダーShoreLand'r (有)不二ロイヤルテクノ


はじめに

 第二回・第三回のトレーラーに関する法律でかたい話が続きましたので、今回はトレーラーの種類や各メーカー品の特徴などをお話したいと思います。


トレーラーの種類

国産品と輸入品
 トレーラーはいろいろな方法で分類できます。生産場所で分類すると国産品と輸入品となります。国産品は製造元がしっかりしているという安心感があり、当然サポート体制もよいはずです。欠点は価格が高いということですが、製品のメンテナンス対応も含めた信頼性はやはり国産品が一番だと思います。もう一方の輸入品については、とにかく価格が安いものが多いことにつきます。本体だけなら4万弱位からあり、トレーラーに入門するには、ぴったりではないでしょうか。ただし輸入品もほとんどがパーツの状態で輸入され、そのままでは前回お話したとおり日本の法律にはマッチせず公道を走行する事は出来ません。また輸入したものを販売店で組み立てて、法定装備類を施したものについては、国産と同様に高価なものが多く、ナンバー取得手続きとセットで法外な値段を請求している販売店もあるようですので注意が必要です。トレーラーを購入する時はナンバー取得まで含めて、総額がいくらになるか確認し、さらに数件のトレーラーショップに電話して比較してみる事をお薦めします。本当におもしろいのは、輸入品のキットを購入して自分で組み立て、ナンバーをとることだと思います。ただし製造元は自分ですから、すべての責任を自分が負わなくてはなりません。自分の作成したトレーラーが走行中に、破損して大事故になっても、誰も責任をとってくれません。しかしメーカーや販売店の押し付けられた既製品ではなく、自分なりにアレンジ(自分のボート専用に改造することです)した状態で、新規登録できることは面白いことだと思いませんか。トレーラーの自作については今後の連載で紹介しようと思っています。どうぞご期待ください。

スチール製とステンレス製やアルミ製
 構造材(主要部材)の材質で分類するとスチール製とステンレス製、及びアルミニウム製に分類できると思います。同じ強度であれば、より耐食性(錆びづらいこと)が高く、軽い方が高価なことはいうまでもありません。ステンレス製やアルミ製は全く錆びないわけではありませんが、錆びづらくやはり高価です。一般的に主流を占めているのがスチール製で、実はスチール製といってもその、防錆処理法によって次のように分類されます。安価な順(錆びやすい順)に書きますと、1.錆止め塗装、2.焼き付け塗装、3.メッキ塗装、4.電気メッキ、5.メッキどぶ付け・溶融亜鉛メッキ(ガルバナイズド)に分類でき、主流は2と5です。5のメッキの中でもメッキの量(厚さ)によって種類があり、当然メッキ厚の高いものが優れています。またメッキは塗装と違い、小さな傷ならば自分自身で再び復旧する力を持っており、コスト性能比ではなかなか優れていると思います。海や湖で見かけるトレーラーはほとんど銀色をしていますが、それが亜鉛メッキの色でどぶ付けの場合はちょっと表面がでこぼこしてざらついている感じです。またホワイトやレッドの鮮やかなトレーラーも有りますが、色のついているものは焼付け塗装品が多く、海水での使用はお薦めできません。淡水であってもメンテナンスを怠るとすぐに錆びてきますので、注意が必要です。


トレーラーの購入方法

 トレーラーはどこで購入するんでしょうかという問い合わせが、私のホームページに多く寄せられています。一般的にはボート屋さんで取り扱っていますので、ヤマハやスズキマリンなどの販売店に行くと、ボートと一緒にトレーラーが置いてあるケースがあると思います。ジェットスキーなどは係留保管はほとんど無いので、全てトレーラーやトラックでの運搬が主力になります。ですからジェットスキーを取り扱っている販売店(バイク屋さんなんかでもトレーラーを取り扱ってくれます。)に行けば購入できるはずです。そのほかにも牽引パーツを扱っている4WDショップなどでも買う事が出来ると思いますし、ミニボートを扱っている釣具屋さんでも購入できるはずです。
 私が自分で組み立てたトレーラーは四輪駆動車の雑誌に出ていたトレーラーをカー用品店で購入しました。届いたものを見るとそれぞれがダンボールで梱包されており、とても車両という感じではなく驚きました。私は現在4台目のトレーラーを使用していますが、1台目、2台目はこの雑誌に出ていたトレーラーを自分で組み立て、3台目はヤマハのボートショップでショアランダーのトレーラーを購入しました。そして今、使用しているのはマリンモーター製のNEO374シーボーイ専用トレーラーで、なんとこれはインターネットでボートと一緒に注文したのです。時代とともに購入方法も変わってきていて、インターネットでボートやトレーラーが購入できる時代になるとは本当に驚きです。


トレーラーの選択


 先ほどからトレーラーの種類や購入方法を書いてきましたが、それでは購入に当たってはどんな注意が必要でしょうか。あたりまえですがトレーラーを買うのが最終目的の人はまずいないと思います。トレーラーは物を運ぶ道具ですから、何を運ぶかによってどんなトレーラーが適しているのか選択しなくてはいけません。ボートを運ぶのか、バイクを運ぶのか、バギー車を運ぶのか、それによって購入するトレーラーが違ってきます。メーカーによってはアタッチメント式でボート用、バイク用と付け替えて使用できるのもあるようです。ただし法律上はボートトレーラーとして88ナンバー登録したものはボートの積載しか出来ません。ここではもちろんボート用を中心に話をしますが、ジェットスキー用とミニボート用は微妙に違っているので、購入するときにはどちらにするのか、兼用するのかの選択が必要です。一般的にジェットスキー用はトレーラーの幅が狭く、車軸も前よりに取り付けられています。これはボートより小さなジェットスキーにとっては、ベストな位置なんですが、ボートを載せるとなると左右の三角表示板がボートにぶつかったり、車軸が前の為にボートを載せたときに船外機側に重心が傾きすぎて、後ろにひっくり返る事があります。特に軽ナンバートレーラーのように全長に厳しい制限のあるサイズの場合は要注意です。基本的にはトレーラーは全長で分類されている事が多い様です。たとえば12フィート用とか17フィート用などと、ほとんどのメーカーがボートの長さでトレーラーを選択できるように分類しているようですので、自分のボートの全長、全幅、重量から各メーカーのトレーラーを検討すると良いと思います。


ベストな選択は専用トレーラー

 それでは何が一番いいのでしょうか。答えは簡単です。そのボート専用に作られたトレーラーが一番正解です。しかし専用トレーラーと言われるのはヤマハのマルチパーパスボートのSRV17TR用、ジェットボートのエキサイターEX1430TR用、そしてマリンモーターのNEOシリーズくらいではないでしょうか。特にマリンモーターはトレーラーに積み込むことを考えて、ハルに補強を入れたりとボートの設計段階からトレーラブルを前提としたボートを作っています。海外製のバスボートなどもほとんどが専用トレーラー付きのようです。専用トレーラーはボートに無理をかけず、傷めないのは勿論ですが、取り扱いも簡単でバンクの位置や幅、ランプの位置などとにかくピッタリとマッチングしています。ですからだれでも簡単にボートをトレーラーのセンターに載せる事が出来ますし、ボート、トレーラーどちらにとっても負担がかからずベストマッチだと思います。


トレーラー購入時の注意


 一番気になるのは価格だと思いますが、先ほども述べたように材質によってかなり差があります。もちろん良い材質で耐久性の高いものは価格も高くなりますが、その反対に価格の高いものは材質が良いかと言うとそうでもありません。なかにはトレーラーを安くして客を集め、警察からの通達だと言う事で法外なナンバー取得費用を上乗せしている業者も現実に有りますので、注意してください。あと、価格の中にどこまで含まれているかの検討も大切です。特に安いトレーラーの中にはトングジャッキやウインチ、ウインチベルトなどは別売のものもあります。この2点だけでも2万円近くかかってしまう場合もあるので良く確認してください。そして絶対に欲しい装備はベアリングバディです。これは何かと言いますと、トレーラーのホイールハブにグリスアップする為のニップルキットです。これがついていないと、いちいちホイールハブをばらしてベアリング部分にグリスを塗りこんでやる必要があります。このベアリングバディも透明なケースで出来ているものもあり現在のグリス量が確認できるものが一番のお薦めです。ちなみに私はグリスを切らしたまま走行して、ベアリングが焼きついて飛んでしまい、タイヤごとホイールが取れた経験の持ち主です(自慢してどーする)。公道を走行中で無かったのが不幸中の幸いで、砂浜でボートを下ろす直前にタイヤが外れてしまいました。このベアリングバディもオプション設定の場合と標準装備の場合がありますので確認してみてください。あと忘れてはいけないのがトレーラーの運送代です。特に私の住む北海道はトレーラー王国では有りますが、ボートもトレーラーも本州のメーカーから運搬してくるだけで莫大な費用がかかります。場合によっては小さな船外機なら簡単に買えてしまうほどです。ですから、トレーラーメーカーに価格を問い合わせするときは合わせて運賃がどれくらいかかるのか、確認を忘れないようにして下さい。


各トレーラーメーカーの紹介

虚s二ロイヤルテクノ (ショアランダー)

 ミッドウエスト製ショアランダートレーラーの日本総輸入代理店です。北海道では一番シェアを持っているのではないでしょうか。ショアランダーはオプションが豊富で世界的にもシェアは高く世界標準と言われています。またフレームは独特のU字構造をしておりボートの積載位置が低い為に海への上げ下ろしがとても楽に行えます。そして個人的には一番デザインの美しいトレーラだと思っています。とにかくカッコよくて絵になります。また必需品であるジャッキやウインチも標準装備されているので安心できます。また他メーカーが運搬コストを考えてボルト・ナットによる組み立て式を採用しているのに、ショアランダーは溶接が基本で本当にガッチリしている感じがします。また溶接後にどぶ付けでメッキされているので、錆にも強いというのが安心です。

潟Tン自動車工業

 4WDファンにはおなじみのトレーラーメーカーです。どちらかと言うと小型のものが多い感じですが、荷台が傾斜してスノーモービルなどを積み込みしやすくしたものやFRPのカウルを装備した近未来的なトレーラーまでバラエティに富んでいます。

潟}リンモーター

 先ほども紹介しましたが、愛媛のマリンモーターという会社がボートと一緒にトレーラーの開発・製作をしています。専用トレーラーというボートには最適のトレーラーを製作しています。また専用トレーラーと書きましたが、もちろん他メーカーのボートを積んでも全く問題はなく、ボートメーカーが作ったボートトレーラーですので安心かもしれません。

その他にも大手メーカーのEZローダーやロードライト、チャンピオンなど海外ブランドがたくさんあり、国産では小塚自動車のエスコやソレックス等も有名です。


 次回は実践的な連結検討書についてとキットのトレーラーを自分で組み立てる話をする予定です。特に連結検討書は牽引車を買い換えたときにはすべて計算して再提出が必要になるのでトレーラーを牽引している方は勉強しておくべきだと思います。


コラム 「トオルのトレーラブルボーティング日記」 


 いつもはホームページの紹介をしているのですが、今回はカートップについて少し書かせていただこうと思います。第二回・第三回のトレーラー入門で法律の話をしてきましたが、実はカートップにも同じような法律が適用されます。どのボート雑誌もカートップを取り扱っているものの、法律について詳しく書かれたものは見当たりません。通常カートップは車の屋根に取り付けたキャリアにボートを積んで走る事が多いと思います。このキャリアはトレーラーでいうヒッチメンバーと同じような指定部品扱いで特別な改造申請や車検証の記載変更は不要となっています。積載重量についてはその車の積載量をオーバーしなければ問題ありませんが、普通はその前にキャリアが壊れてしまうのでキャリアの過重制限のほうが重要かもしれません。有名メーカーのキャリアはどれも50kg程度以上の過重にも耐えられるように出来ているようですが、私が以前乗っていた車は屋根が弱く、キャリアメーカーからの指定過重は35kgとなっていました。35kgというと、積載できるボートはかなり限られてしまいます。また重量以外の長さや幅についての法律も当然カートップにも適用されます。長さについての飛び出しはトレーラーと同様に車両の10%までが認められています。ですから長さのあるボートやカヌー・カヤックなどは軽くても注意が必要です。4.5mの乗用車には4.95mまでのカヤックしか積載できません。また軽自動車に積み込めるボートも旧規格の軽自動車なら3.3の全長に対し、積めるボートは3.63mまで、新規格で3.4mの軽自動車なら3.74mまでしか積載が認められておりません。ミニボートといわれるもののなかには3.8mを超えるものも有りますので注意が必要です。また幅についてもトレーラーと同様に厳しい規則があって積載物は車両の幅を超えてはいけません。普通車はあまり問題にならないかもしれませんが、これも軽自動車ですと旧規格なら1.4mまでで、新規格でも1.48mまでしか積載できないので、幅広のアルミボートやFRPボート、そして膨らませた状態のインフレータブルボート等は法令違反になる可能性があります。そして一番大事なことは荷崩れを起こさないように前後左右をしっかり固定する事です。ボートを屋根から落とすと、かなりの大惨事になりかねません。走行中に車を停車させてもう一度、ボートの固定状況やロープのしまり具合を確認するくらいは必ずやったほうが良いと思います。私も以前はカートッパーでしたので・・・・。

※当時の連載記事です。現在の法律と違っている部分がありますのでご注意下さい。
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